学長メッセージ

長崎大学 学長 永安 武

長崎大学は、未知の感染症との闘いにおいて、古くから日本の感染症対策の最前線に立ち続けてきました。離島固有の風土病はもちろん、江戸時代、長崎が海外に開かれた唯一の窓口だったことから、海外から持ち込まれる感染症の対応にも迫られました。それ以来続く長い経験の蓄積が、熱帯医学研究所や感染症研究出島特区をはじめとする長崎大学の感染症研究のフィールドを世界に広げ、いわば必然的に他大学に先駆けて「グローバルへルス」を理念に掲げる大学となりました。

しかし、21世紀を迎えた私たちの地球は、気候変動、環境汚染、新型コロナウイルス感染症に代表される未知の感染症や疾患との闘いに加え、人口問題、食糧問題、格差、ジェンダー、宗教や文化の対立、高まる核リスク等の多くの地球規模課題を抱えています。 このような状況下において、長崎大学は地域活性化の中核としての大学を目指すとともに、「グローバルヘルス」をさらに発展させ、地球の健康、すなわち「プラネタリーヘルス」の実現という目標を新たに掲げ、世界の様々な領域で問題となっている地球規模の課題解決に資する人材の育成及び課題解決に向けた教育と研究を推進していくことを宣言しました。

プラネタリーヘルスとは私たち人間の健康も含めた「地球の健康」を支え続けるために有効な「答え(解決策)」を探求し、私たち自身の意識変容、行動変容を促す取組みのことだと考えています。その探求は、地球や地球上の生態系との関係を踏まえて社会のあるべき最適な姿を模索することであり、「科学の視点」と、「市民・企業・行政などの多様な視点」を重ねて行われることが必要不可欠です。

長崎大学は、このプラネタリーヘルスの実現に向け、生命医科学のみならず、人文社会学、総合生産科学などのそれぞれの専門家が学問領域を超えて教育、研究に取り組んでいこうと考えております。